ニューヨーク市の公立高校は、日本と同様に概ね生徒の学力によって受け入れを決めるので、日本と似たような受験文化があります。ただしシステム自体は日本のものよりもはるかに複雑なので、保護者は何がどうなっているのか理解するのにかなりのエネルギーを使います。

毎年ニューヨーク市の教育委員会は、市内のすべての公立高校の情報が収められた3〜4センチぐらいの厚さの冊子を受験を備えた生徒に配布します。それぞれの学校は何人の新入生を受け入れるのか、どの程度の成績の生徒が入れるのか、特別な試験があるのか、選考のための提出物を要求されるのか、などの事柄が書かれています。

数年前から市の教育委員会は、市内トップの幾つかの公立高校に学習障害を持つ子供達をもっと積極的に受け入れるように圧力をかけ始めました。その結果、今年から高校の案内冊子にSWDという新しい項目ができました。SWDとは Student With Disability の略です。学校は半ば強制的にADDや学習障害を持つ子供の入学を一般の生徒とは別枠で受け入れ始めたのです。

私のようにADDを持つ子供の親は、子供をできるだけいい学校に通わせてやりたいという気持ちとともに、他の一般の子供達とは異なる学び方をする自分の子供に合うように個別で丁寧な指導をしてくれる学校を選ぶのが重要なポイントです。

たとえ子供がとても優秀な生徒が通う学校に子供出来たとしても、その学校に学習障害やADDを持つ子供をサポートするシステムがなければ、子供は落ちこぼれてしまうからです。今まではそれを嫌って、多くのADDを持つ子供の親は、子供をあえて実際の学力よりも低いレベルの高校に入学させがちでした。

ニューヨーク市内でもトップクラスのいい学校がADDの子供を受け入れ始めたのはいいことなのですが、始まったばかりのシステムなので、学校側がどれだけ受け入れ体制を整えているのかまだわかりません。SWD枠の受け入れに関して個別の説明会を開いている学校は数少なく、資料も実績もほとんどない状態なので、親が各学校に直接問い合わせて事細かに質問をするしか今のところ方法はありません。

ただでさえニューヨーク市の公立高校選びは大変なのに、SWD枠に入れることもの親はもっと時間と労力を割かなければなりません。それでも新しいSWD枠を教育委員会が儲けるようになった事自体、大きな進歩だと思っています。